「ほんとにそうか?」に込められた思い【ドラゴンボール】
ドラゴンボールの名言を一つ上げるとしたら、必ず上がる「ほんとにそうか?」
今回は、なぜこの言葉がすごいのか解説しようと思います。
結論から言えば「悟空は『ベジータが本当にいい気分である可能性を捨ててない』から」です。
順を追って説明します。
ベジータの本音からの「………おかげで、今はいい気分だぜ」
本当のことをしゃべった後に、ニヤリと笑いながら嘘を吐く悪人顔。
この言葉を投げられた時、主人公が取る行動は主に『3つ』あります。
一番多いのは『否定』
「違う! お前はそんなやつじゃないはずだ!」
とか、そういうやつ。
王道主人公ならこう返すでしょう。
2番目が「肯定」
「お前、変わっちまったんだな……」とか
「だったら、もっといい気分にさせてやるぜ!」みたいなやつ。
3番目が「無回答」
そもそも返答しない系主人公。無難。
「……さぁ、やろうぜ」とか
「それじゃあ、ケリつけるか……」
サクサク次の展開へ進めるにはうってつけです。
おそらく自分が描くならこのセリフにします。
しかし、鳥山明は4番目の行動を示してくれました。
それが4番目の「問いかける」です。
この悟空の心境はずばり「ほんとにいい気分かどうかなんてベジータ本人にしかわからないから、ベジータに問いかける」ということです。
これの何がすごいかって、悟空さんはグレーゾーンを許容しているということです。
学生の時は、常に正解を求めがちです。
テストには明確な答えがあるし、正解を求められる。
だけど、社会人になった皆さんならわかるはずです。
「本当は悪いことだけど、放っておいた方が都合が良いこと」
「本当は善良なことだけど、やらない方がいい都合が悪いこと」
白か黒か、その境目にあるいわゆる「グレーゾーン」の存在。
悟空さんは、ベジータだけが「いい気分か否か」の答えを持っていることを知り、そしてベジータの感情を決めつけることなく問いかけているのです。
いまのベジータの心境を見透かしたようにニヤリと笑うのも良い。
「ほんとにそうか?」
物事の真偽を問いかける、実に深い言葉です。
ドラゴンボール第38巻